なかなか仕事場が遠くなって行けなくなった。それでますます恋しいのが四谷『鈴傳』である。四谷駅から新宿通をほんの数分歩いたところ。ここは明らかに酒屋でしかない。でもその酒の品揃えが半端ではない。だいたいこの鈴傳の凄い所は地酒といったらまったく下等な酒とされていた時代から「いい酒はいいのだ」という独自の日本酒への評価を持っていたところである。ここで初めてであったのは30年近く前の「三千盛」「出羽桜」から焼酎の「二階堂」、はたまた「十四代」まで数知れず。
この鈴傳の創業は文久三年、すんわち今を去ること150年も前である。当然、江戸は見附を外れていても屈指の老舗。そんな老舗にして進取の気象が甚だしい。
ここに来てまず立ち飲みをしなくてはいけない。そうして旨酒を探すのだ
残念ながらここに来れるのは近くで仕事をしていた時期を除くと一年に二度か三度。これが残念なところである。くるとまず立ち飲み部に入ってしまう。ここで冷や酒を2,3杯。ここで出される酒は店主自らがうまいと判断した旨酒ばかり、ここで手作りの肴と共に堪能して地下の酒蔵に下りるのだ。そして冷風の中、旨酒を探し出して買って帰る。
旨酒は地下で探すのだ。この冷気の中で眠っている旨酒を思案しながら買うのがいいのだ
これが鈴傳での流儀。立ち飲み部で決して泥酔することなかれ。
鈴傳酒店 東京都新宿区四谷1丁目10