2007年7月アーカイブ

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 山形県には銘酒があまたある。そのどれもが切れがよく、それでいて旨味もあるという、「つい飲み過ぎて困ってしまうぞ」という酒ばかり。なかでも「くどき上手」というのは最たるものだろう。その飲みやすい「くどき上手」に辛口の酒がある。日本酒度+20というのは数字からすると超辛口である。それで「ばくれん」なんだな、とは合点がいく。

 ここで脱線するが初めて「くどき上手」の酒瓶を見たときにはとても買い求める気にはなれなかった。これがいかにもわざとらしい浮世絵美人画、日本酒の日常的なさりげなさを美と感じるボクにとって少々品がないと敬遠したのだ。ところが行きつけのそば屋でいっぱいやってからは「くどき上手」のうまさにはすっかり「やられて」しまっている。

 超辛口の酒とはいうものの、この「ばくれん」、くいくい飲む限りぜんぜん辛口でも何でもない。とにかく喉越しがよく、しかも辛さ、そして旨さがほどよく余韻として残るのだ。これをして「酒飲み殺しだ」と文句のひとつも言いたくなるほどだ。
 しかも値段をご覧じろ、なんと2千円札と百円玉二個で買えるのだ。恐るべし亀の井酒造と言っておこう。

亀の井酒造 山形県鶴岡市羽黒町戸野字福ノ内1

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 今回の日本酒は小見川からの帰り道に佐原で買ったもの。千葉県佐原ほど町歩きして楽しいところはない。だから霞ヶ浦や小見川に行った折りには必ず佐原での時間を作る。そして市内の中村屋という酒屋に立ち寄り日本酒、醤油などを土産に買うのである。
 さて千葉県は優れた醤油蔵が多く、これを選ぶのに苦労するくらいだが、日本酒に関してはかなり迷う。例えばせっかく佐原に来たからには地酒でも買おうかというと懊悩するのだ。この町には銘酒の誉れ高い「東薫酒造」というのがある。これは無難な酒造りの蔵であるがボクの好みから外れる。またもうひとつの「馬場本店」の日本酒は過去にいいな、と思ったためしがない。唯一、中村屋に置かれている「たごと(漢字を忘れた)」というのがよいのだけれど、この店、夕方にはしまっており、今回のような帰り道には買い物ができないのだ。
 そこで「馬場本店」なら名物最上白味醂があるではないか? とは思ったが自宅には一本の酒もなく、迷った末に「雪山」を購入したのである。
 この酒、やはり平凡だな。いちよう吟醸とうたっているのに香りに乏しく、味わいに一本通った筋道がない。どちらかというと旨口で味にふくらみがある。これで舌にしっかり辛みでもあると抑制の利いたいい酒なのだけど、その節度に欠ける。冷やよりも燗酒に向くのかも知れない。
 やっぱり佐原に行くなら中村屋で吟味した酒を買うべきなのかも知れない。

馬場本店
http://ciaosang.client.jp/sawara/

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 さて佐賀県鹿島市にあって「鍋島」とはごっつい押し出しではないだろうか? 佐賀の伝統、文化とかを全部引き受けたような。また磁器の「鍋島」だとしたら色絵の華やかさを表現したのだろうか?
 この酒、ひとくち含むやうるさくてかなわないのである。ここにあるのはハリウッド映画、CGでもお色気だろうがなんでもぶち込んだような猥雑さを感じる。辛みは感じるものの強すぎる吟醸香、そして旨味も濃いし甘味もある。うるさいなと思いつつも飲んでいて不愉快かというと、どこかにしまりがある。どうにもこの酒の表現に困ってしまうような酒である。
 はっきりいってうるさい騒々しい酒が苦手な向きには嫌われるだろうな。例えばヨハン・シュトラウスの子供、ヨハン・シュトラウス二世とヨーゼフ・シュトラウスとの違いのようなもの。ちなみにボクはヨーゼフ・シュトラウスの方が好きだ。でもときどきヨハン・シュトラウス二世の「こうもり」なんて聞きたくなる。この二世がベートーベンよりも世に受け入れられていたというのも「鍋島」が持てはやされる所以かな?
 この騒々しさに日本酒としてはキラリとして宝石のようなものを見る。すなわちここに抑制がきいてきたら銘酒になりそうだ。例えば落語家が「枯れて」よくなるような。ボクのような大酒のみには、この若すぎる酒は少々耐えられない。でもうまいことはうまい。このアンバランスを解消するのがこの酒蔵の課題かな。

富久千代酒造有限会社
〒849-1322 佐賀県鹿島市浜町1244・1254-1

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 帰宅が2時過ぎ、ふとんにもぐり込んだのが3時過を回った頃、そして6時には寝床から抜け出した。押っ取り刀で身繕いをして国道16号にクルマを走らせる。八王子魚市場到着はびったりの6時半。ここでヒモマキバイさんを待つ。待つほどもなくヒモマキバイさんが到着。そのすぐ後に海老さんも合流する。
 八王子魚市場、八王子綜合卸売センター、八王子総合卸売協同組合とふたりを案内。魚などを買い込んでケータイを見ると10時を回ってしまっている。そのまま八王子農協「ふれあい広場」で地物野菜、牛乳を買いだし、神山豆腐店にまわる。
 神山豆腐店で「健康納豆、がんもどき2つ、木綿豆腐2丁、そして油揚げ5枚ください」と奥を見る。ちょうど油揚げを作っているところではないか。揚げたての油揚げの袋が熱い。
 近所の酒屋で「ばくれん」という本醸造を買い込んで帰宅したのが11時過ぎ。軽くシャワーを浴びて大好きな「永六輔の土曜ワイドラジオ東京」を聞く。かたわらにあるのが神山豆腐店の油揚げ。これがまだ熱いのである。それに海老さんにもらった「つくばね」という小さな大根をおろしで添える。「ばくれん」が辛口でうまい。そこに油揚げで、なかなか豪華な昼酒となる。これで気分がよくなって、やっと午睡。

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