2月11日から16日までの山陰、鳥取、島根、山口、山陽岡山の旅はまことに強行軍につぐ強行軍だった。
そんななかでも唯一、のんびりした時間を過ごせたのが岩美町にある岩井温泉。
遠路深夜バスで辿り着き、網代港での水揚げを見て、浜勝商店でホタルイカをゆでる作業などを見た。深夜バスでの疲れが見て取れたのか、岩美町を案内してくれた川上寿郎さんが連れて行ってくれたのが岩井屋というまことに端正な宿。ここにある温泉で疲れ果てた身体を癒す。
そして岩美町といったら忘れてはいけないのが『瑞泉』という酒なんだという。この『瑞泉』に関する情報をくれた方々に感謝。
『瑞泉』を買いたいというボクのお願いに、川上さんが連れて行ってくれたのが『中島酒店』である。
いかにも雑然とした普通の酒屋であり、店内に入ると立派な体格の、気のいい娘さんが出てきた。「これは困ったなー」と思いながら「瑞泉」の四合瓶を探していると、試飲に出してきたのが吟醸でもなく、特別純米でもない普通の「上撰」と「佳撰」の2種類。
この娘さん、よく見ると美人だし、なかなかやるじゃないの。全国どこでも酒屋に入ると真っ先に進められるのが、吟醸酒であるが、これが迷惑極まりない。その酒蔵の良し悪しは絶対に吟醸酒ではわかるはずがない。
今夜、ホテルで飲むことを告げると、進めてくれた紙コップ型の「上撰」と絵柄入りのワンカップを買う。ついでに買い求めたのが岩美町の「マルマン醤油」。ちなみにボクは旅の途中で見つけた醤油をどんどん買い求めてしまう。当たり前だが、いつも持ち歩く買い物用クーラーバッグがどんどん重くなるわけで、これも旅の疲れを助長する。
そんなとき、川上さんが、
「ここじゃ、立ち飲みも出来るんですよ」
それで立ち飲みのカウンターに座る。ここ一角はもともとは立ち飲み形式だった。それが常連さんの高齢化にともない椅子を置いたのだという。
品書きにあったのが「ゆかむり豆腐」。
実は岩井屋の湯船で川上さんが見せてくれたのが「ゆかむり唄」。頭に手ぬぐいをのせて、唄いながら手桶で湯を叩くように、湯をすくい、頭にかける。
この面白い名の「ゆかむり豆腐」を食べないと豆腐狂としてはダメダメなわけで、それにはコップ酒もついてくる。
ほどなく出てきた「ゆかむり豆腐」がよかった。
まずは『中島酒店』独特の練り味噌で半分、残りは醤油、一味唐辛子で食べる。豆腐自体がうまいのもあるが、食べさせ方がしゃれている。
当然、真っ昼間に飲む「上撰 瑞泉」もしみじみうまいもので、一瞬頭がぼーっとなり、心地よい。
この小さな小さな温泉場の、隠れ家的な岩井屋に一泊。食後に『中島酒店』で深酒するというのも楽しそうだ。もしも出来ることなら、我が、親戚一同(全国にちらばる)と集まって、この止まり木で深酒に浸りたいものだ。
中島酒店 鳥取県岩美郡岩美町岩井548番地
岩井屋
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ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
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