秋葉原を北におりて目の前にある高層ビル、これがヨドバシカメラだと思って歩いていたら、右手に山手線京浜東北線のホームが見える、その先に「ヨドバシカメラ」の文字。慌てて歩道橋を下りてガードをくぐり、この巨大なカメラ屋で買ったのが充電式の電池3組。値段にして4600円ほど。たったこれだけなのにヘトヘトになってしまっている。とにもかくにも店内が五月蠅すぎる。ヨドバシカメラは客がじっくり品物を選ぶのを邪魔したいのだろうか?
そのまま帰ろうかなと思ったのだが、アバタノオジサンが神田和泉町にうまい立ち食いそばの店があると書いてきてくれているのを思い出して昭和通を渡る。この神田和泉町はアルバイトで通ったところ。昭和通から一歩路地に入り込むと意外に当時の街並みがそのまま残っている。残念ながら通り沿いの刷毛やブラシの店はなくなっているものの、ここから凸版までの道筋が懐かしい。
その路地を撮影しながら歩く内に、とても寂しい通りの奥に小さな赤提灯を見つける。店の前まで来ると扉が半分開け放たれて、帰宅途中のサラリーマンが立ち飲み中。よく見ると一人客もいるようで、ふらりふらりと引き寄せられる。入ってみると店のシステムがわからないので奥の四角い厨房の前でなすすべもなく、やっと煮込みと酎ハイをお願いする。その小さなスペースでは焼き鳥を焼き、肴を整えているのが見える。中央にテーブル、両脇にカウンターがあって、一人客は当然、脇もしくは隅っこにくることになる。
思ったよりも待たされて酎ハイがとどく。この店の酎ハイは氷と焼酎を予め入れて置いて炭酸はビンで来るタイプ。これが酎ハイではもっともオーソドックスな形で好ましい。「酎ハイ」ではなく「酎ハイボール」だったらもっとよかったのだが。
ヨドバシのボヤボヤガシャガサと五月蠅い中を歩いてきてこの一杯がなんともうまい。そして煮込みが到来。ここにはレンゲが添えられている。なぜなんだろうと思っていたら白モツが小さく刻んであるのだ。そして煮込んだ汁が少し生臭い。これは少し改良の余地がありそうだが、それでもうまいにはうまい。酎ハイを重ねて、珍しいガツ刺しというのを追加。このガツ刺しが二杯酢にショウガでとてもいい。そしてレバーを2本。かれこれ20分くらいはいただろうか? 支払はいちいち済ませるやり方なので正確ではないが合計で1500円ほどだろう。
ガツというのは豚の腸だったかな。これうまいな。ガツのこと、『大商ミート』で聞かなくちゃいけない
値段も安いし、料理もいいし、店員の女性もとても気さくで対応が自然である。これならヨドバシカメラに立ち寄った後はここに来て、秋葉原のノイズを落とすのもいい。店のテレビには台風13号の進路が映し出されていて、あさっての高知行きが絶望的なのを知る。
昼飯抜きで立ち飲み。そのため空腹感が助長されている。結局、アバタノオジサンに教えられた店は見つからなかった(店名は双葉だった)。まったく違う店に入ってしまって、そこそこうまいので半分満足して昭和通りを渡る。
そして大嫌いな秋葉原の駅に飛び込むのである。昔から大嫌いであった秋葉原の喧噪・ほこりっぽさ、これがますます強大化してオヤジには「一つ目国」になってしまっている。そんなことを考えているとボクと同年輩のオヤジが下りのエスカレーターで嬉しそうにゲームに興じている。コヤツやるではないか! と尊敬の念が浮かぶ。