葛飾立石「うちだ」で梅割り

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 この店の名前からしてわからない。暖簾を見ると「宇ち多」なのだろうか? あまり自信がないので「うちだ」とする。この店のことを知ったのは『下町酒場巡礼』による。食べ物関係の店で「本を見て行く」ということは絶対にしないのだけど、この本、著者の年代的からもしみじみその良さが伝わってくる。そのせいかここに書かれている店は素直に行ってみたくなる。そのなかでももっとも行って見たかったのが「うちだ」である。
 葛飾立石は都心からだと40分以上かかる。しかも「うちだ」の開店が午後3時、午後5時には売り切れのモツ焼きが出ると彼の本には書いてある。当日は仕事が急に取りやめとなって、ぽつんと時間があいてしまった。でも時既に3時近い。

 とにかく押上を目差し、京成電車に乗り込む。立石駅から歩くこと数十メートルで「うちだ」に到着した。4時前のことだが、驚いたことに席はあらかた埋まってしまっている。そして指示を受けて座ったのが品書きのまったく見えないところ。これはまことに残念。
 やや奥まった席に座ると薄暗いのと、満席のざわざわした低い騒音に気持ちがかさかさ滑っていく。この店、入り口近くは仲見世からの光が入り込んで明るいが全体に薄暗く、壁や机の古びた色合いと共に沈んで見える。そこに見る客層はばらばら様々であって、「昔からここで飲んでいるよ」という地元組、「わざわざここまで来たというグループ」、はたまたサラリーマンであったり、ボクと同じように「一度飲みに来たかったんだ」タイプまでいる。

 店内に入り、すぐさま座る席を指示されたと書いたが、なんだか席に着いてからも慌ただしい。ぜんぜん品書きが見えないので、しかたなく煮込みと梅割り。周りを見ると梅割りにサイダーを並べている人が多く、これを足すと酎ハイと言うことだろうか? でもとてもサイダーを飲む気持ちにはなれない。ビールに冬なら燗酒というのもあり、神谷バーのハチブドー酒、デンキブランなどがある。
 梅割りを注文するとさっきのテキパキしたお兄さんが片手に焼酎、片手に梅エキスの入った瓶をもって、まず、焼酎を分厚いグラスに満たし、そこに溢れるように梅エキスをそそぐ。これが甘いけれど、なかなか鄙びた味わいでいい。そこにみそ味の煮込みが間髪入れずにくる。この煮込みが濃厚だがさすがにうまい。うまいというより酒を呼ぶ味わいだ。

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 煮込みと梅割りをやりながら、すぐに梅割りをお代わり。「生」というのをお願いしたかったが「レバー」はいやだし「あぶら」も嫌だな、なんて思っていて仕方なくレバーとこぶくろをタレで。すると出てきたのがでかいモツ焼きである。それも170円2本が決まりなのでなかなかボリュームがある。
 また、梅割りをお代わりして、またまたお代わりしてお仕舞いにする。これで2千円を渡してたっぷりおつりがきた。

 店に居たのは30分と少し。飲んでいるときにも回りのお客の出入りが激しく、長居をする人は皆無である。最近、下町で飲んでいて気がついたことは「酒の飲み方がきれいで、あっさりしている」こと。中央沿線や神田などには未だにからんでくる、いきなり話しかけてくるなどヤカラがいる。これが下町だと話しかけるにしてもほどよく上品なのだ。
 さて、初めての「うちだ」はやはりじっくり味わって飲むという境地には至らなかった。これはまた再度挑戦するしかない。しかし、煮込みはうまかったな。


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このページは、管理人が2006年7月23日 17:19に書いたブログ記事です。

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