「同じ四国でも徳島の酒にろくなもんがない」、そんなことを言いながら酒を浴びるように飲んでいた友がいた(今でも生きているが)。これは本当のことでボクの親戚筋にも酒蔵があって、それがまさしくべたべたの日向臭い甘酒であった。とても冷やではのめない。
そこへいくと土佐の「司牡丹」は冷やでうまいのである。これは二十歳すぎに1本飲みきって痛感したこと。やはり酒は辛口がいい。でもそれからいろいろ銘柄を飲み漁る内に「司牡丹」を飲む機会は皆無となってきた。なぜならば「三千盛」や「浦霞」、「鄙願」などと比べるに味わいに欠けるように思えてきたからだ。
そして久しぶりの「司牡丹」。さすがに辛口でうまいのだが、後一歩味わいにもの足りないところがある。
辛口の酒は旨味が薄いのかというと、けっしてそうではない。どーんとした辛みが通奏低音のように続き、様々な旨味が舌を楽しませる。そして喉越しがいいから、その旨味がすぐに消えて芳醇な香りだけが残る。これがボクの理想である。「司牡丹」はこの旨味と辛みのバランスが悪く、つっけんどんな味わいなのだ。
このけっして親しみやすくない味わいを改めて味わって、もっと驚いたのは五十路になって意外に「司牡丹」がうまいと思えたことだ。きっと酒の味わうにボクの方の受け皿が広がったためだと思う。長い間「司牡丹」から遠ざかっていたのを悔やむ。
司牡丹
http://www.tsukasabotan.co.jp/
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑へ
http://www.zukan-bouz.com/
八王子総合卸売協同組合「伽や」の韓国風煮込み 後の記事 »
京都府伏見「英勲」
コメントする