福島県浜街道はいわき市から北に山深く、そして海近く、長々と相馬まで続く。そのもっとも狭隘な部分が双葉郡である。この山がちな楢葉町に「白冨士」を造る冨沢酒造はある。都心ではほとんど見かけることのない酒であり、どうもこの狭隘な場所でのみ消費される、まさに地の酒であるようだ。
購入したのは「道の駅ならは」。どこをどうとっても硬質な無機質な品性を欠く建物で、この物産館も「道の駅」としてはやや低級。それでもさすがに地の酒だけは置いてあった。とうぜん酒飲みとしては敢えて高い酒など買いたいわけではない。いたって普通のもっとも地元で消費されているだろう本醸造を求めてきた。
この本醸造がなかなか悪くない。このクラスでも出色の酒蔵なら値段以上にうまいものを作り上げているのだが、残念ながらその域には達していない。でもやや辛口に、旨味もほどよく、後口もよい。これは地元の酒飲みにも愛されるである日常の酒である。
私的にはこのような地の酒はよきものと感じる。いわき市、双葉郡あたりで、「白冨士」の4号瓶を買い求め、「ならはの湯」につかって車中泊も悪くない。
冨沢酒造店 福島県双葉郡葉町大字新山字北広町8