日本酒図鑑: 2006年8月アーカイブ

 これは八王子の酒販売店「鶴屋」が佐渡名醸に作らせて販売しているもの。多摩周辺の飲食店に売られている。日本酒のみとしては少々味気ないものだが都心の酒屋としては最近さかんにこのような企画販売をしている。
 さて、飲食店で使うのであるから「酒の個性」よりも「肴」を活かすものでなければならない。そう言った意味合いからするとこの「石翆」は合格点に達している。なによりも辛口で切れがよく、ほどほどに醸造された旨味もある。
 さすがに酒を売るプロのコンテンツとしては手堅いが、さて酒好きを自称する人には受け入れられるだろうか?
●八王子市川口の「誠寿し」でいただいたもの

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鶴屋
http://www.sake-tsuruya.co.jp/

 まことに芳醇で飲みやすい酒である。クイクイと喉を通りすぎていく。かといって旨味がないのかというとうまくて、そしてどこまでもなだらかなのだ。このような酒はまったく初めてである。味わいとしてはとても独自なものだ。
 こんなに甘口に感じられて、香りが高く、酸味が薄く、底辺にしか辛さを感じないのに切れがいい、うるさくない酒は初めてだ。まことに困った日本酒としかいいようはがない。たぶん、酒飲みならあっというまに1升瓶が空になるだろう。
 酒の名の「庭の鴬」というのも九州の酒蔵だというのもどうでもいいのだが、これは間違いなく銘酒である。

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2850円
山口酒造場
http://www.niwanouguisu.com/

 埼玉に行きたいと思ったときにできれば酒蔵のある町に行きたいと思った。それで飯能に行ったのだ。そして町に入ったと思って最初に見かけたのが「天覧山」の文字。道沿いの店舗はそっけないもの。でも日本酒なんて見た目で判断してはいけない。
 入って出来るだけ、酒蔵の味わいがわかる「純米酒」、「辛口本醸造」を選んで、また奈良漬けも購入してきた。酒蔵の由緒などは五十嵐酒造のサイトを見てもらうとして、味のことである。
 味わいは淡麗辛口の部類だろうか? 非常に軽い感じ。それなら飲みやすくて切れのいいものか? というとそうでもない。すなわち辛みだけが感じられてうまくないのだ。だいたい辛口の酒というのも甘くないわけではない。甘さというのは旨さでもある。「●●水のごとし」なんてバカな名前の酒があるが、酒は「水のごとし」では絶対にダメ。酒の存在感がないと意味がない。そんな存在感に欠ける酒であった。そして、後のことになるが飯能に行き、こんどは「生酒」というのを飲んでみた。するとこれはなかなかうまいのである。
 余談だが、この天覧山の「純米酒」のラベルが汚い。この文字はなんだろう? どう見ても気品のある文字には思えない。かなり有名な書道家にでも書いてもらたんだろうか、それにしても深い青紫にロゴが黄色、そこに赤い文字が並ぶというのは異常だ。よほどその土地にでも行かない限り、この趣味の悪いデザインには手が出ない。

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五十嵐酒造
http://www.snw.co.jp/~iga_s/index.html

 東京都多摩地区、青梅などには思った以上にたくさんの日本酒の醸造元がある。それが意外に水準が高いものなのだ。その中でも、ボクの好みの酒を醸しているのが石川酒造である。
 懐寂しいお父さんであるので1升の予算は2000円以内。このクラスでうまい酒を造っているのがもっとも良き蔵元という論法が成り立つのが、また面白いことに日本酒の世界である。すなわち値の高い酒だけがいい酒蔵は「ろくなもんじゃない」のだ。東京など都会ではいざしらず、日常的に吟醸酒を飲むなんて、一般家庭では無理も無理。またいい肴があって、だから値の高い酒がいいのかというと、これもまったく間違いであるのだ。
 下町の大衆酒場で飲(や)る2級酒(今ではこんな等級はないが下町では現役で使われている)、これなど1ぱい200円から250円なのだから合成酒かも知れない。ただ、この2級酒を「うまい」と飲めるようにならないと「ダメダメ野郎」なのだ。
 さて話はハズレに乱れてしまったが、多摩自慢の「上撰本醸造」1890円、「佳撰 辛口」1643円が値段からしてうまい。ともに辛口で切れがいい。それなのに味わいも深い。ボクなど懐が寂しいときには「佳撰 辛口」という選択が増えるがこれなら晩酌でむなしい気分にならなくてすむ。

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石川酒造 東京都福生市熊川一番地
http://www.tamajiman.com/index.html

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