日本酒図鑑: 2007年2月アーカイブ

eikun0702.jpg

 山梨県富士吉田市、都留市などで目につく酒、これがなぜか「英勲」なのである。酒に詳しくない我が妻など「英勲」を山梨の地酒だと思い込んでしまったほどだ。
 気になって富士吉田の酒屋をのぞくと実際に「英勲」がずらりと並ぶ。帰る前に一本買ってみようとしていながら買いそびれてしまって、東桂、都留と下る坂道でも「英勲」の文字を見るのだ。結局、高速にのる都留でスーパーに入り、酒売り場に並んでいた「英勲」普通酒1610円を買ってくる。
 ラベルには京都府伏見の酒であることがあり、どうして山梨にこれほど「英勲」が並んでいるのか、結局わからずに終わる。本当になぜなんだろう。
 買ってきたのは「英勲」でも安いもの。昔の二級酒にあたるのだろう。ラベルがなんだか不思議な八角形の囲みの中に「英勲」の文字がある。この八角形が勲章のメダル部分であり、「英勲」の「勲」は勲章の一字であるようだ。
 アルコールはもとより、糖分、酸味料まで添加している。とうぜん生で飲むとややべたつく。甘くはないが、なぜかべたつくのだ。それではと熱燗にしてみると、これが辛口に変身していい味わいなのだ。これは富士吉田の古めいた居酒屋で一献といきたい鄙びた、そして時代遅れの味わいである。きっと団塊の世代ならこの良さが、ボクよりももっと身にしみるだろう。
 最後に、やっぱりどうしても「山梨に英勲」の関係がわからない。不思議で仕方ない。

英勲
http://www.eikun.com/

tukasabotan0702.jpg

「同じ四国でも徳島の酒にろくなもんがない」、そんなことを言いながら酒を浴びるように飲んでいた友がいた(今でも生きているが)。これは本当のことでボクの親戚筋にも酒蔵があって、それがまさしくべたべたの日向臭い甘酒であった。とても冷やではのめない。
 そこへいくと土佐の「司牡丹」は冷やでうまいのである。これは二十歳すぎに1本飲みきって痛感したこと。やはり酒は辛口がいい。でもそれからいろいろ銘柄を飲み漁る内に「司牡丹」を飲む機会は皆無となってきた。なぜならば「三千盛」や「浦霞」、「鄙願」などと比べるに味わいに欠けるように思えてきたからだ。

 そして久しぶりの「司牡丹」。さすがに辛口でうまいのだが、後一歩味わいにもの足りないところがある。
 辛口の酒は旨味が薄いのかというと、けっしてそうではない。どーんとした辛みが通奏低音のように続き、様々な旨味が舌を楽しませる。そして喉越しがいいから、その旨味がすぐに消えて芳醇な香りだけが残る。これがボクの理想である。「司牡丹」はこの旨味と辛みのバランスが悪く、つっけんどんな味わいなのだ。
 このけっして親しみやすくない味わいを改めて味わって、もっと驚いたのは五十路になって意外に「司牡丹」がうまいと思えたことだ。きっと酒の味わうにボクの方の受け皿が広がったためだと思う。長い間「司牡丹」から遠ざかっていたのを悔やむ。


司牡丹
http://www.tsukasabotan.co.jp/

このアーカイブについて

このページには、2007年2月以降に書かれたブログ記事のうち日本酒図鑑カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは日本酒図鑑: 2007年1月です。

次のアーカイブは日本酒図鑑: 2007年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。