ワンカップ図鑑: 2006年8月アーカイブ
利根川の川港として江戸時代から栄えた佐原は、今でも江戸情緒が残る町である。ここに全国的にも有名な酒蔵が2軒あって、そのひとつが「東薫」である。この「二人静」なんてなかなかいい酒であり、立ち寄るたびに求めてきている。
そんな「東薫」にもワンカップがあったんだ、という驚きとともに原材料を見てまたビックリ。糖分・酸味料添加なのだ。銘酒蔵でもこんな酒を造るんだな? と怒りを感じるのは無知なヤカラ。地方の酒蔵だけでなく多くの醸造元が、所謂普通酒という安酒を用意している。これが意外に優劣があって面白いと思えるくらいじゃなきゃ酒飲み失格なのだ。
そして、この「あやめカップトウクン」、絶妙なバランスの味わいでなかなか魅力的なのだ。これは職人技とでも言えそうだ。このランクの酒では自家醸造したものではないだろうが技ありの良き酒である。
水郷佐原にふさわしくアヤメのワンカップ。これちょっとインパクトに欠ける。とキャップを見ると面白い絵柄なのだ。浪人が刀を抱えて大どっくり、杯に旨酒を満たしてうまそうに飲む。これ天保水滸伝の平手造酒なんだろうか、味のある絵で、何度見ても見飽きない。こちらをワンカップの絵柄として使うとワンカップの覇者になれそう。しかしいい絵だな。誰が描いたんだろう?
ワンカップコレクター太郎の評価/だからーー、花は嫌いだって言っただろう。バカだなお父は!
(ちなみにこれは所謂よくある「どうでもいいから花でいこうや」というものではない。水郷佐原はアヤメで有名なところ)
●千葉の海人 つづきさんから
千葉県勝浦はクロダイ釣りで通いに通った町である。そして民宿などに泊まると出てくるのが「腰古井」か「東灘」。これがともにうまいのである。当時民宿で出していたのは当然のごとく二級酒というやつ。そんな安酒の「腰古井」がうまいのは疲れていたせいだろう、と思っていた。それが改めて糖類添加のワンカップを飲んだら、意外や間違いなくいい酒である。
これは安い酒こそ漁師などに愛されているわけで、そんな海辺の町の酒であることを大切にしているのではないか。ついこういった想像を巡らせてくれる。そう言えば千葉県に関しては海辺の酒はうまいが、山間部の酒はまずい、という気がする。
このワンカップの持ち味はうまいのに切れがいいこと。すなわちクイクイいけるのだ。だから飲み過ぎには注意が必要だろう。
さて、ボクからの「腰古井」の飲み方の提案。それはワンカップをクーラーに2〜3本、夕方に串浜の堤防に入って夜を明かしでクロダイ釣り。潮が動かなくなって当たりが遠のいたら月を愛でながら「腰古井」を飲む。残念ながらこんなことをやっていたらクロダイの形は見ないで終わるだろうな。
ワンカップコレクター太郎の評価/絵がないから×
吉野酒造 千葉県勝浦市植野 571
http://koshigoi.com/
「山桜梅」で名を馳せる有名酒蔵である。現当主で55代目ということだから信じられないほど古い家だ。ボク的にはいかにも由緒ありげな、こんな酒蔵が嫌いなのだが、それと酒の味わいは別物である。すなわちうまい酒なのだ「郷の誉(郷乃誉)」は。
なにしろジワリと深みのある味わいが舌に残る。残るのに辛口に感じるのは一定の辛みが通奏低音のように続くからだろう。
ワンカップでこれだけの味わいを堪能させられたら、当然一升瓶も買いたくなるだろう。
若いときときどき無性に山に行きたくなって、八ヶ岳の頂上を目差さないで周辺の町や村を散策。また昆虫や魚をとって、野宿をしていた。そんな帰り道に買うのが「谷桜」なのであった。この「谷桜」、山梨にあって銘酒の誉れ高いもの。それが意外なことに地元の普通の酒屋にはなくて、なかなか苦労して探したものだが、今はどうなんだろうか?
さて、「谷桜」というのは好みの酒である。鋭角的な辛口の酒が好きなのだけれど、谷桜は旨口というか軟らかな味わいの酒である。良酒という言葉に置き換えても谷桜を表現できるだろう。決して今風に飲みやすさ、切れのよさを追いかけていない。昔ながらの酒の味わいが残っている。
ボク的にはぬるく燗をつけたのがいいのだけれど。ワンカップなので、そのままお湯(ガス台の上には置かない)につけて食卓に。これでちょうどぬる燗になる。夏のぬる燗もいいな〜と、肴は八王子並木町「魚茂」茂じいさんのビンテージ・イカの塩辛。この良さはオヤジにならないとわからないもの。年取って良かったな。
谷桜酒造 〒409-1502 山梨県北巨摩郡大泉村谷戸2037
「尊皇」とはまた右傾化した名の酒で幡豆には何度か立ち寄っているが敬遠していた。どうにもリベラルな世こそ至上と思っているので「文字」からしてイヤなのだ。でも酒自体とは別物だと思い知ったのが今回のワンカップである。
「焚火」という意味不明の商品名。その脇に「若水辛口」とある。若水は酒米の品種名。これを醸して辛口の酒を造ったと言うことらしい。その味わいはすこぶるボクの好みにあっている。辛口でありながら味わいがある。そして最初の辛みが後々までだれない。どこまでも余韻として残る。
ワンカップでこれだけの味わいを堪能したら、またなおさらに三河に行く楽しみが増えたと言うこと。酒の商標には引っかかるがいい酒だな。
山崎合資会社 愛知県幡豆町大字西幡豆字柿田57
http://www.sonnoh.co.jp/