この「一ノ蔵」を初めて飲んだのはもう20年以上前のことだろう。当時宮城県と言えば「浦霞」しか思い浮かばなかったとき。愛読していた季刊誌「四季の味(この雑誌、20ダイから30代初めにはなかなか影響を受けた。今ではあまりに子供っぽくて読み返す気にもなれないのだが)」で取り上げられていて、デパートで買ってさっそくひと瓶あけてしまった。まだ等級制度のあった時代で、しかもこの等級というのがいかがわしいこと限りなしの曖昧模糊とした代物だった。それを申請しないと言う意味合いの「無鑑査」なのである。それを等級制度のなくなった今でも銘柄にそれを謳っても決して飾りではないところが凄いと思う。
1988年には宮城県の酒蔵まで行って買いもとめたこともあったのだ。当時宮城県は道路はがたがた、大変な旅であったのを思い出す。そして岩手の海岸線での野宿。聞こえるのは海鳥の声だけ、塩釜の市場で買い求めた肴で半分ほども飲んで、窮屈な車内で熟睡した。その朝の海辺の光景は今でも忘れられない。
さて、どうして「一ノ蔵」がいいのかというと、「高い銘柄も安い銘柄もおしなべて優れている」がためである。この1700円代の安酒の味わい、決して平凡な酒蔵の2000円台後半のものと変わらないレベルをたもっている。なにしろ適度に切れがあるのだけど、ず〜んと続くダレのない辛み、その上、舌を満足させる旨味、このバランスのよさは素晴らしいと思う。
ちょっと褒めすぎたので、この酒で気になるところを一点。たぶん酒蔵として味わい造りのイメージングがしっかりしているのだと思う。例えば「飲みやすく、しかも飲み飽きない」とか。でも「あばれる」味わいを極力抑えているために無個性であるように思えるのだ。決して飲みやすくない「菊姫」のやり方もある。20年前からたぶんグンと醸造量も増えているに違いなく、今でもそうだろうがいつの間にかなんでも作れる大企業に成り下がってしまいそうだ。
一ノ蔵
http://www.ichinokura.co.jp/
このサイトまことにうるさくじっくり読む気になれない。これはwebクリエーターが幼く少々おろかなのに違いない。もっと成熟した大人のクリエーターにやり直してもらったほうがいい