ワンカップ図鑑: 2006年7月アーカイブ

 酒米に美山錦を使用、しかも精米度が麹で55パーセント、掛け米で60パーセントという純米酒である。ワンカップというと200円前後の製品が多いのだが、これは300円である。最近、このようにランク上位の酒をワンカップにする醸造元が多いのだが、これはとてもよい戦略である。後、2〜3年もすると日本酒はワンカップでまず味見して、それから一升瓶を買うというのが主流になるものと思う。また居酒屋でもワンカップで酒のラインナップをするというのは絶対に面白い。絵柄の面白さか、はたまた味で選ぶか、なんだかこれだけでオジサンも若い衆もドキドキ楽しいだろうな。
 さて、秋田の酒、「天の戸 純米酒」であるが、とても秋田とは思えない淡麗な味わい。飲んだときには一時物足りなく感じるほどだが後に続く辛さと旨味が調和して舌に来る。これはいい酒である。また見つけたらぜひ他の製品も試してみたいと思った次第也。

amanoto001.jpg

浅舞酒造株式会社 〒013-0105 秋田県横手市平鹿町浅舞388番地
http://www.amanoto.co.jp/

 秋田の「なべ婦人」からいただいたもの。ご子息が山梨の大学に進学されて、ときどき川口湖町に行かれているらしい。土地と人の縁というのも不思議だし、その縁にボクも加えてもらってありがたいと思う。
 さて河口湖町は富士山麓の観光地。また彼の『冨士日記』、武田百合子の鳴沢村の隣町というのも惹かれるところだ。この地で幕末以来酒を醸してきたのが井出醸造所である。
 いただいたのはワンカップで普通酒である。この普通酒をどのように造るかで、その酒蔵の実力がわかるというのがボクの考え方である。確かに純米酒や吟醸酒のように値のはるものではないのだが、地元の方などにもっとも親しく飲まれるものだ。これをおろそかにする酒蔵が苦手なのだ。
 そこに『甲斐の開運』ワンカップなのであるが、とてもいい酒である。思ったよりも辛口で味わい深い。あまり冷やさないでちびりちびりやっても充分に楽しめる。こんな普通酒を造るならこんど見つけたら純米酒などを求めてみたくなる。

kaikaiunn.jpg

井出醸造所
http://www.kainokaiun.jp/

 太郎のワンカップコレクションでももっとも美しいもの。これを氷水につけたときの幻想的な赤紫が、深夜のいっぱいにもってこいであるように思えた。当然、長野を旅していて見つけたら「買うだろう」といったもの。まさに長野の高原地帯の玲瓏を表現しているようである。
 ただし、飲んでみると味は重い。重いというか日本酒度が低いためか、甘く糠臭さを感じる。冷やよりも燗がいいかも。でもこの絵柄をして燗をしたらイメージに違和感を感じるだろう。このワンカップに関してはどうにも飲み口の悪さから惹かれるところはない。

hakubanisikidato.jpg

ワンカップコレクター太郎の評価/絵があるし、お茶を飲むとき使うんだけどいいと思うな。「山がいいんだな、山が」。ハハハ………
薄井商店 長野県大町市大字大町2512-1
http://www.hakubanishiki.co.jp/

 この酒をどうして買ったかというと、ずばり『釣りバカ日誌』の絵柄による。他に他意はなく「白鶴」がうまいだろうと思ったのでないことは明示しておきたい。でもこのパッケージは、面白いな、ついつい買ってしまう。考えて見るとビックコミックオリジナルに「釣りバカ日誌」が登場したのはいつだったろうか? 無趣味な浜崎伝助氏が課長に誘われて、そしていつの間にか釣りバカになってしまって「出世を忘れ」万年平社員になってしまう。確か25年くらい前。当時は熱狂的なクロダイ釣り師になろうかと言う時であり、毎週読むのが楽しみだった。
 また漫画とはまったく内容が異なる映画「釣りバカ日誌」も決して嫌いではなくテレビなどでやっているとついつい見てしまう。今時、こんなわかりやすいお笑いも珍しく貴重である。
 きっとこの白鶴酒造が映画「釣りバカ日誌」のスパンサーなんだろう。そして安酒ともいうべき「まる」であるが、思ったよりもよく出来ている。糖分も酸味料も添加して作られた味なのだがくどくなく、味気なくもなく。適度に飲み口もいい。大手があなどれないのが、こういった製品なのかも知れない。

hakuturu.jpg

白鶴酒造
http://www.hakutsuru.co.jp/index.html

 緑色の福助、赤い福助と並んでいる。なんだか今風の目立ちたがりの絵柄だな、と思いながら「緑」を買ってきた。「大塚酒造」は初めて飲む酒蔵。期待しないで飲むと、思ったよりうまい。というか端的にうまいな。良くできた酒だなと思うのは辛さと甘味旨味のバランスがいいのだ。これなど冷やでじんわりと飲むのに向いている。
 そしてラベルを剥がそうと水に漬けて置いてあとは忘れてしまっていた。その翌日、太郎が、
「父ちゃん、このワンカップ何時買ったのかな」
 持ってきたのを見ると松の印象と「秀緑」の文字。そうか紙のラベルの下にこんな絵柄が隠れていたのだ。ちょっとこれは面白いな。なかなかやるじゃないか、「大塚酒造」。
●葛飾区立石の「酒の美濃屋」で購入

shuroku001.jpgshuroku002.jpg

ワンカップコレクター太郎の評価/青い絵と字は好きなんだよ

大塚酒造 茨城県板東市岩井3351-1
http://www.shuroku.com/

 ワンカップには力を入れないという酒蔵が多いように思える。当然中身は藏元の最低ランクの酒。でもワンカップでその酒蔵を知ろう、またいちばん手っ取り早い酒蔵との出合いだと思っているボクにはワンカップを大切に考えない酒蔵の考え方は理解できない。ただし、ワンカップを作る以前に非常に仕込む石高の少ない酒蔵は仕方がないと思うのだが。
 さてそんなときに見つけたのが「福千歳」である。この酒蔵、山廃仕込みで有名であるという。当然、ワンカップながら山廃のよさである旨味があって、しかも適度に飲み口がいい。
 初めて飲んだ「福千歳」なかなか好印象であった。

fukutitosw.jpg

福千歳
http://www.fukuchitose.com/index.html

 これも高尾の「ポプラ」で見つけたもの。この高尾の「ポプラ」面白いな。
 さて、『石陽日本海』がある旧三隅町は日本海に面した静かな町である。一昨年訪れて、ここから山口県への国道のなんと暗くて、また寂しいところよ、と深夜の国道を走りながら思ったものだ。
 さて、そんな遠路を八王子まで来たのが「カップセキヨーニホンカイ」である。秋の青空を思わせる色、そこに白地の明解なデザイン。どんな味わいなのだろうと口に含むと冬の日本海のように重い味わいの酒である。これはワンカップに飲みやすさとか、味わいとかが必要ないとの考えがあるのだろうか? もしくはこの普通種に力を入れていないためかな? いい酒蔵というのはいちばん安い酒を飲んでも出色の感があるのだが。せっかく「石陽」という名を記憶したのに残念である。またこんな重い酒がまだまだ島根で受けているのか、と思うとその風土も経験したいと思う。
 ボクが思うに、この味わいでは都会の精神的に追い込まれている世代には受け入れられないだろう。「日本海酒造」の酒にも多々種類はあるのだろうが、もっとワンカップにも力を入れて欲しい。

sekiou.jpg

ワンカップコレクター太郎の評価/字はだめなんだよ。山とか、景色があるといいんだけどな。あと目盛り(計量の)があるともっといい

日本海酒造株式会社 島根県浜田市三隅町湊浦80番地
http://www.cadbox.co.jp/sekiya/kuramoto/shimane-nihonkai-syuzo.asp

 最近気がついたのだけれど、コンビニでもともと酒屋を経営していたというケースは多いようだ。この場合、他のコンビニよりも酒の種類が多いのは当然であるが、珍しいワンカップも多々見受ける。今回は高尾山口に近いポプラというコンビニ。ここがなかなかアルコール飲料の品揃えがいい。
 そこで見つけたのが「金紋會津」である。変形のグラスに山とわらぶき屋根の民家。きっと会津地方の風景を移したものであろう。これが非常に好ましい。
 過去の経験からすると福島県会津地方の酒は多種類飲んでいるのだがあまり相性がよくない。そんななかで「金紋 會津」というのは初めて飲むもの。
 これが意外にいい味わいである。ワンカップで225円であるから普通種であろう。ただし糖分もアミノ酸なども無添加とあるように素直な下手の酒であって、これは立派に酒飲みの友となりうる。辛さがほどよく、それでいて旨味が浮かんでくる。その旨味が喉に消えるときも後味がさらりと切れるのがいい。

kinmonaiduda.jpg

ワンカップコレクター太郎の評価/そう、これ、絵が書いてるのがいいの。後ろに山とか、家もあるし。

会津酒造 福島県 南会津郡南会津町永田字穴沢603番地
http://www.uyou.gr.jp/aizu-syuzou/index.html

 これは千葉市の海人つづきさんからの贈り物。我が跡継ぎである太郎が熱中しているのがワンカップのグラス集め。特に紙を貼るのではなく印刷というかグラス自体に模様が入っているのが収集の対象。このために我が家のコップはワンカップだらけ。それで見るに見かねて、つづきさんが太郎の趣味に、ぼうずコンニャクの大酒飲みを察して送ってくれたわけだ。

 この「吉壽」、千葉の内房から外房鴨川に抜ける山中にある城下町久留里にある吉崎酒造のもの。久留里は町中に噴水井戸のある水の里。その水は通るたびに汲んでくるが美味である。水がいいということで、千葉にあって有数の酒どころでもある。
 久留里の水は軟水で飲みやすいのだけれど、日本酒はいかにも鄙びた味わい。今時の酒の切れがどこにもない。当然、「吉壽」もそんな味わいの最たるもの。冷やでは重く麦芽糖のような風味があり、べとついた感じ。できれば燗をつけるとこの重さも消えて味がぐんと飲みやすくなる。
 またカップのデザインも田舎臭くて、これはなかなか捨てがたい。この花がなんだかわかるだろうか? 西洋の花であるようなないような。こんな大らかさが山里に似合うのだ。
 ということで、ぼうずコンニャクはワンカップ図鑑を始るのだが、その第一を千葉の馴染みの藏元から始められたことを、つづきさんに感謝。

kitijuna.jpg

ワンカップコレクター太郎の評価/字にヒゲが生えているのがいい

吉崎酒造 千葉県君津市市場102
http://www.chuokai-chiba.or.jp/sake/kura/kura6.html
●お魚三昧日記から

このアーカイブについて

このページには、2006年7月以降に書かれたブログ記事のうちワンカップ図鑑カテゴリに属しているものが含まれています。

次のアーカイブはワンカップ図鑑: 2006年8月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。